最近読んだ本

久々に本の話など。


『その名にちなんで』(ジュンパ・ラヒリ/新潮文庫
その名にちなんで (新潮文庫)
予告編を見た映画が良さそうだったんだけど見にいけなかったので原作を。カルカッタからマサチューセッツに移住してきたベンガル人夫婦とアメリカで生まれたその息子の2代にわたる物語……とか言ったところで何が伝わろう。妙なたとえかもしれないけど、ひどく丁寧で精緻な鉛筆スケッチ画の、何百枚という束のような。時々意外なものが描かれていたり、泣きたくなるようないい絵があったり。



『停電の夜に』(ジュンパ・ラヒリ/新潮文庫
停電の夜に (新潮文庫)
上記がしみじみと良かったので、本棚から掘り出す。初見のときよりも意外なほどずっと面白く感じられてちょっと驚いた。この本への適齢期が来たのかしらん。



鹿男あをによし』(万城目学/幻冬舎
鹿男あをによし
普通に結構おもしろかった。ドラマは見てないんだけど。西大寺と新大宮の間に平城宮跡が広がってるのもそこいらのちょっと盛り上がった木立や学校の裏山がいちいち古墳なのも線路の横にわかりやすい前方後円墳が見えるのもごく当たり前ですが何か。朱雀門とか通学風景でしたが何か。
ところで「おれは」が多すぎる。一人称なんだから主語そんな言わんでええ。



ジーヴスと恋の季節』(P.G.ウッドハウス/国書刊行会
ジーヴスと恋の季節 (ウッドハウス・コレクション)
鹿男に「さかな顔」が出てきたので思い出した。書いてませんが出るたびに全部読んでます。マンネリの偉大さよ。どんだけしっちゃかめっちゃかでも最後にきれいに収束するのがわかってるのでタノシス。



生物と無生物のあいだ』(福岡伸一/講談社現代新書
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書) [ 福岡 伸一 ]
おおお面白い、わかりやすい。何故我々の身体はこんなに大きくなければいけないのかとかかなり興味深かった(でもどんなに納得してもしばらく経つと「あれっどんな理屈だったっけか」とわからなくなる悲しき文系)。専門に片足でも突っ込んでる人たちが読んだらたぶん当たり前のことしか書いてないけど、まるで門外漢の読者にこれだけわかりやすく説明できる文才は素晴らしい。新書って本来そうあるべきだと思う…でもそうでないのもいっぱいある。同時に、どれだけ説得力があっても極めて有力な一仮説でしかない、ってのも、肝に銘じとかなきゃいけない新書のお約束ではありますが(一世を風靡した竹内久美子もこの中でさっくり反論されてる)。
…飲み会でこんなお話してくれる人がいたら超ときめくのになー。なんで皆、音楽だのサッカーだのスノボだのどーでもいい話しかしないんだろ。(マイノリティの自覚はあります、何かの間違いでこんなとこに迷い込んだ男子のみなさん、参考にしちゃだめですよ)



東海道中膝栗毛』(十返舎一九/岩波文庫
読もう読もうと思いながら手をつけてなかったパターン。弥次さん喜多さんて長屋の飲み友達とか近所の岡場所仲間とかそういうオッサン2人組かと勝手に思ってたんですが、オッサン&若手の元カップルなんですね。元は陰子と客で地元で遊びすぎてお金なくなって江戸に出てきたんだそうな。知らなかった。真夜中の〜はあながち根拠のない話でもなかったのか。
そして東海道をずっと歩きとおすのかとこれも勝手に思ってたら結構たびたび馬に乗ったり駕籠に乗ったりしている。なーんだそうなのか。
普通にからりと面白かった〜。ワンパターンの面白さ。



スカイ・クロラ』(森博嗣/中公文庫)
スカイ・クロラ (中公文庫)
映画の予告編を観て、ザ・ハリウッド映画よりは良さそうかな〜でも難解かな〜ああ原作つきで森さんなのか…無理かも。と思ってたら弟の本棚に転がってたので失敬してまいりました。んー…今まで何作か試したけれど要するに私は森博嗣と気が合わないんだと思う…。文章のタイプも苦手なんだと思う。好きな人ごめんね。生命とか世界とかいうものを、視点を切り替えて外側から淡々と眺める感じは、その感覚が理解できないのではなくて別に折に触れ普通にやってることなのでわざわざ綺麗な詩に仕立てるほどのことでもないかなとか。



サロメウィンダミア夫人の扇』(オスカー・ワイルド/新潮文庫
サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇 (新潮文庫)
「そなたの唇にくちづけするよ」が読みたくなって引っ張り出してきた。で、サロメもやっぱり面白かったし、2作目も楽しかったけど、3本目に入ってた「まじめが肝心」がものすごい可笑しくて電車の中で困ってしまった。あれーなんだこれ。こんなに面白かったっけ。遊び盛りの若紳士の嘘から事態がどんどんおいおいどうすんねんこれ的ピンチに膨らんでいって、最後に見事全てがきれいに収束する大団円。ウッドハウスみたいに面白い!お芝居で見ても楽しいだろうなー。日本語だとうまくいかないのが残念ですが。せっかくのタイトルも「まじめが肝心」じゃ洒落が盛り込めてないしなあ。だからって英語じゃ私には無理だし(笑)。