かもめ

藤原竜也くん主演のお芝居を見に真新しい赤坂ATCシアターへ。お隣は244さんがライブやったブリッツですね。女性トイレがたくさんあるのはいいけど1階ロビーが狭すぎやしませんか。2階から覗いて八坂神社の初詣みたいな混みように探検を諦めたよ。


観る前に予習しようと、大昔読んだ(俺だけのアンゲロスがトレープレフをやったころ読んだのよ・笑)新潮文庫を引っ張り出してきました。当時はいまいちよくわからなかったけれど、あらすじは覚えていたので表紙をめくって「喜劇」の文字にぎょっとした。これ喜劇なのか。その後調べたところによるとチェーホフ自身が演出家に「そんなに重くしないでよ喜劇なんだから」と再三主張したとやら。そうか喜劇なのかぁぁー。確かに状況が悲惨でも結末が悲惨でも、その中に一生懸命に生きる人たちは皆それゆえにかえって愚かでかわいくて滑稽なんだけれども。必死だね、でもダメなんだよね、そういうもんだよね、って。ほんとに笑えるし、それと悲劇性は矛盾しないけれども。ぬおお。
…というわけで再読しておお面白いではないかと思い、観てみたらもっと面白いお芝居でした。もちろん面白おかしいというだけの意味ではなく。泣いた泣いた。たまらなくかわいくてかわいそうなコースチャの作品には生きた人間がいないそうですが、ここには生きた人間しかいない。すごいなあ。少しも古びてないし。登場人物の誰にでもなれそうだ。…私はなんだかもうソーリン翁気分ですよ。そしてこんな気持ちはドルン医師みたいな人にはわかりっこないんだわ(笑)。
藤原くんのトレープレフすごくよかった。すごくトレープレフだった。チラ見したキラの良さはよくわかんなかったけど、これはさすが素晴らしいと思いました。プログラムの中で「自分には知性や物を書く雰囲気が足りてない」というようなことを本人が言っていてそういえば確かにそうかもしれませんが。
(どうでもいいけどプログラムやポスターがヒゲだったので、うーん個人的嗜好として男の色気をヒゲに感じるには多少の顔の長さと彫りの深さが欠かせないのになーこの子も似合わんタイプだよーと思ってたら舞台ではすっきりでよかったよかった(笑)。ほんとどうでもいいな。でもえらい痩せた印象でしたよ。今ヒゲは岡田くんかっこいいね!)
麻美さんの華やかで我儘でチャーミングでそして悪気なく無神経な大女優の役もぴったりでした。役者さんみんなそれぞれ良かったなー。前半のニーナだけが無垢すぎて若干あほのこみたいでしたけどこれはこれでありなのか。



ところで藤原くんはタイプは違えど色々と母親との関係が大きな影をおとすお芝居をよくやっているイメージなのですが、いっぺん剛さんもそういうのやってみてくれないかなー。ドラマじゃなくて、生の舞台で。一回撮って終わりじゃなくて稽古から楽まで数ヶ月単位で刻々と掘り下げ否応なく自分と向き合うような。観客として単純に見てみたいというのもあるし、剛さん自身なにか開く蓋がある…見えてくるものがあるんじゃないかと思うのですよ。…まあしはらへんやろけども(笑)。